深読みする日本人

2019年10月19日

山岡です。

中国で働く人へ向けての内容を書いていますが、今回は、日本人の中国人に対する対応です。

「相手の腹を読む」
「腹芸」
「ちょっとした表現の違いで本心を伝えようとする」

日本語の表現は直接的なものを嫌い、婉曲にやんわりと伝えるのが良いとされています。
そして、それが相手を気遣うことでもあるでしょう。

でも、中国語の表現は、あの大陸で間違いなく意味を伝えることに特化しているので、表現が直接的です。

「あるかないか」"有没有?"
「良いか悪いか」"好不好?"

このようにどちらかをはっきり選ばせる表現が好まれます。
それに対し、日本語の表現は;

「こっちの方がええと思うんやけどどう思わはります?」

確かに相手を傷つけまいとして気遣っているのですが、このような表現では中国人だけではなく外国人には通じません。

そのまま日本語にしたらぶっきらぼうに、そして場合によっては失礼に聞こえる表現をするのが中国語です。

さて、そんな中国語を使用している中国人ですが、日本人と中国人が一緒に働くと、日本人はどうも深読みする。それもし過ぎる傾向があるようです。

ある日、いつも明るい中国人女性社員が不機嫌になっている。
日本人の駐在員たちは「彼女。何かあったんだろうか」とあれこれ推測する。
でも、当の本人に、

「日本人たちは貴方が機嫌悪いのを見て、『どうしたんだろう?何かあったのではないか?』と噂しているが何かあったのですか?」

と聞くと、

「別に何もない。ただ、最近、仕事がいっときにたくさんやってきてそれでイライラしているだけだ。」

感情をストレートに表現する中国人。
それに対して相手のちょっとした仕草から本心を探ろうとする日本人。
日本と中国の間に立つ私は日本人に対して「あれこれ勝手に想像するより、直接聞いたらいいのに」と思いますし、中国人に対しては「そのような表現では日本人に誤解される。日本人はこんな風に思っているよ」とアドバイスします。

中国人女性社員が不機嫌だということなら「考えすぎ」で終わるのですが、一緒に仕事をしていると相手の本心を探ろうと気遣うことが次第にストレスになり、

「中国人はわからない!」

となってしまう人もいるようです。

最近までいた京都の会社で次のようなことがありました。

日本人は中国工場を何とか独り立ちさせようとしている。
独り立ちするためには生産を増やし、できた製品を販売しなければならない。
だから、日本側は中国工場へ注文を出そうとしている。
そして、日本側が「このような仕事があるからやってみてはどうか?」と聞くと、中国工場の工場長は「従業員がいない」だの「中国の品質は悪いから製品品質を確保できない」だとか日本人が「やりたくないから言い訳をしている」と思うようなことばかりを言う。
だから、日本側は;

「こっちが色々考えて、せっかく注文を出し、生産させようとしているのに、あれこれ言い訳ばかりして注文を受けようとしない」

と思っています。
でも、私が中国語で工場長から事情を聞いた所、工場長は決して注文を受けたくないのではなく、ただ、注文を受け生産した場合に発生するだろう問題点を説明していただけでした。
それは工場長の「生産に対する責任感」でした。

工場長も中国工場が独り立ちしなくてはならないことはよくわかっており、そのための営業方針も立て、彼なりに努力はしていました。
それは「色々と不安定な環境の中で慎重に状況を見ながら成長する」というものでした。
でも、それでは日本側は納得しない。
「一年でも早く独り立ちするためにはまず受注量を増やし、それを販売する努力をすべき」というのが日本側の考え。
どちらも間違いではありません。
足りないのは「相互理解」。
特に、日本側が中国工場の工場長に「なぜそのようなことを言うのか?」と聞き、工場長の考えをよく聞けばよいのですが、日本人の「深読み」で、

「あの工場長はこちらがせっかく注文しようとしてもあれやこれやと言い訳ばかりして受けようとしない。」

と決めつけていたのです。

私がしたことは、工場長と時間かけて日本側の状況、特に「深読み」から工場長が誤解されているということを説明しました。
そして日本側には工場長の真意。つまり受注し品質的に安定した製品を作る事が前提で、事前に起こりうる問題点を説明しているだけであることを説明しました。
すると工場長はすぐに理解してくれました。
でも、日本側は頭では理解するのですが、自分の「深読み」にこだわり、なかなか状況を受けいることができません。
ですから折りに触れ、何度も何度も説明しなければなりませんでした。

このように日本人の「深読み」から日本側が勝手にあれこれ想像(妄想?)している状況はよくあります。
ちょっと聞けばいいものを、相手の気持を察するということが身についているからでしょう、

「中国人はこうなるんだ」

と決めつけてしまいます。

「相手の話をしっかりと聞く」
「冷静に物事を分析し、論理的に思考する」

精神的に成熟していなければなかなかできないことですが、海外ではこれらをしっかりとしなければ言葉の壁があるので大きな誤解を招くことになります。

「行間を読む」
"理解字里行间的含意 lǐjiě zìlǐhángjiān de hányì"

このことはとても大切です。
相手の気持ちを慮る。
これはおもてなしの心にも通じることで、本来ならすばらしいことですが、自分本位に読んでしまっては残念なことになります。

日本に生まれ、日本で生まれ育った人。
日本の文化の影響を受けて育った人はその細やかな心遣いを慎重に正しく使って欲しいと思います。

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